慢性副鼻腔炎
まんせいふくびくうえん
〔耳鼻咽喉科〕
原因/症状
急性副鼻腔炎の炎症がなおらず、膿がたまる病気で、蓄膿症ともいいます。
鼻の粘膜には粘液層があり、細菌の侵入を防いでいます。しかし、ウイルス感染症などで粘膜がおかされると抵抗力が弱くなります。そこに細菌が二次的に感染して炎症をおこします。この炎症によって副鼻腔に膿がたまります。これが慢性副鼻腔炎です。
鼻腔の炎症は、早期に治療をすれば、ほとんどは治癒します。しかし放置しておくと、慢性化してしまいます。
副鼻腔はとても狭い穴で鼻腔と通じていますが、副鼻腔が炎症をおこすと穴がふさがってしまいます。そのため、副鼻腔内の細菌感染が長期化し、膿汁が停滞します。そして副鼻腔内の粘膜が炎症性の変化をおこしたものが、急性副鼻腔炎です。
この急性副鼻腔炎は、多くが自然、あるいは治療で回復します。しかし、感染が何度もおこり、粘膜の炎症性変化が慢性化して再び元にもどらなくなることがあります。これが慢性副鼻腔炎です。副鼻腔は閉鎖的に構造になっているので、一度炎症をおこすと鼻腔にひろがりやすく、膿がたまりやすいのです。そのため薬物も到達しにくくなり、炎症もなおりにくくなります。
症状は、多くが鼻炎をともないます。鼻腔粘膜が腫れたり、鼻茸ができると、空気の通り道が塞がれるため、鼻づまりがひどくなります。炎症が長くつづくと、粘膜からの分泌物が過剰となり、鼻水が粘りけをおびたものになって、膿を含んだ鼻水がのどへ下がる、後鼻漏があらわれます。また、頬や鼻の根本の部分や側頭部など、炎症をおこしている副鼻腔に対応する部分に痛みを感じたり、頭痛や頭重感をなどがおこります。人によっては味覚障害や、鼻性注意集中不能症という注意力や記憶力が減退してあきやすくなるなどの症状がでることもあります。
鼻がつまるため、口で呼吸することが多くなります。そのため、鼻汁がのどに流れたりして気管支に炎症をおこしたり、胃腸障害をおこすこともあります。
さらに副鼻腔にとなりあった耳管や目に影響がおよぶと、耳管炎や滲出性中耳炎、眼精疲労、弱視などの合併症をひきおこすこともあります。
検査・診断/治療
鼻鏡検査によって、粘膜の腫れぐあい、鼻漏、副鼻腔開口部の鼻汁のほか、中鼻道にポリープがあるかを調べます。さらに、副鼻腔の自然孔にたまっている液の病原菌を特定するための検査をします。これは、のちにもっとも効果的な抗生物質を選択するためです。
病変の部位や程度をさらに詳細にとらえるためには、X線検査やCTスキャン、磁気共鳴画像診断装置のMRIなどの画像検査も必要です。このほか、嗅覚検査や鼻腔の通気度の検査をします。
最近ではアレルギーをともなう慢性副鼻腔炎が増えています。そのため、アレルギーがあるかを検査しなければなりません。
治療としては、軽度や中等度では薬物療法を行います。鼻腔粘膜の腫れをとるために、収斂薬や血管収縮薬などを綿棒で粘膜にぬるほか、抗生物質や消炎薬などの混合液を噴霧するネブライザー療法、自然孔から副鼻腔に薬液を入れるプレッツ療法などがあります。また、副鼻腔の自然孔に細い管を挿入して膿を排出したり、上顎洞洗浄を行ったりします。
症状が強く、薬物療法や洗浄法でも効果がない場合は、手術が必要です。以前では副鼻腔の粘膜をすべてとり除いてしまう根治手術が行われていましたが、最近では内視鏡による鼻内副鼻腔手術が多くなってきました。これは粘膜を温存し、副鼻腔の機能を回復させることに重点をおいた手術法です。この手術は患者への負担が軽い上、術後の回復も早く、入院も短期間ですみます。